2014年8月20日水曜日

エッセイ By イーグル 351,155

2014年8月20日(水)
<壮年の主張>  By イーグル
 2014年10月より、根室市観光協会では協会の会員を対象に「野鳥観光ビジネススクール(仮称)」を立ち上げ、ガイド養成・受け入れ態勢の強化などに本格的に着手しようとしています。将来、この分野での雇用の創出を促進し、道東の野鳥観光を「産業」の領域にまで引き上げていくためには、より多くの方々の野鳥観光に関する理解を深めていただく事が必要だと考えたためです。出来るだけ異なる業種から、より多くの会員さんの受講を期待しております。
 尚、スクールの詳細につきましては、10月に発表予定です。
 
 そこで、今日は趣向を変え、以前、野鳥観光の将来有望性について書きました小生のエッセイを掲載させていただきます。

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「野鳥観光を地域活性化の起爆剤に!」


 野鳥観察を初めて早や30年になる。と言っても、58歳という年齢を考えるとかなり遅咲きのバードウォッチャーである。以前勤めていた会社では、有給休暇のほとんどを野鳥観察に充て、国内の主な探鳥地にはほとんど足を運んだ。30年間で見た日本の野鳥は500種類を超える。

 休日の野鳥観察は、仕事で疲れた心身を癒やしてくれる優れた精神安定剤である。無邪気な野鳥の姿を見ていると本当に心が癒される。また、野鳥を求めて歩きまわった日の万歩計の数字は軽く2万歩近くを示す。運動不足解消にも非常に効果がある。更に、特筆すべき事に左目の視力が0.7から1.2に向上した。40歳を超えてから視力が良くなるなんて信じられないと人間ドックの先生に驚かれた。野鳥を観察している時は、近くの鳥をじっくり見た後、いきなり遠くの鳥に視線を移したりする。つまり無意識の内に目まぐるしく目の焦点距離を変えるのである。これが、目の水晶体を動かす筋肉を鍛え直すのではないかと思う。このように、私にとって、野鳥観察はもう死ぬまで止められない健康増進剤にもなっている。

 現在、私は根室市観光協会の「バードウォッチング観光振興アドバイザー」として、野鳥観察を目的とした観光客の道東地域への誘致活動に従事している。野鳥観察が本業にもなっているわけである。東京の大学を卒業後、大手航空会社に就職した。10年に及ぶ海外勤務を含め、人事・営業職を中心に31年間勤務。4年前に同期より一足お先に早期退職し、日本一の野鳥の宝庫(根室市)に移住した。私にとっては、「転職」は「天職」へつながるスタートラインであった。正にCALLING。道東の野鳥に呼ばれている気がした。夢は「野鳥観光振興による雇用の創出と道東経済の活性化」である。

 道東の野鳥は日本の他の地域の追随を許さない強力な「顧客吸引力」を持つ。とりわけ、長年にわたる手厚い保護活動が結実し1500羽に達したお馴染みの「タンチョウ」、もう日本には140羽しか居ないと言われている「シマフクロウ」、そして世界のバードウォッチャーの垂涎の的である「オオワシ」はその代表格である。私はこの3種類を「道東のビッグ3」と呼んでいる。とりわけ、オオワシの人気は海外を中心に「別格」「絶大」である。世界には約9,000種類の野鳥が生息しているが、その中の人気ランキングでオオワシは10位以内に入ると思う。正に日本を代表する鳥と言っても過言ではない。外国人バードウォッチャーは、オオワシを日本の国鳥にするべきだと真顔で話す。

 しかし、もったいない事に、この「ビッグ3」を見たくて海外の野鳥愛好家が道東へラブコールを送っている事実に地元の多くの方々は無関心である。しかも、日本の観光客が寒さに二の足を踏む12月から3月が、渡り鳥であるオオワシ観察の好機ときている。また、タンチョウ・シマフクロウは1年中道東に居る為、冬季には「ビッグ3」すべてが揃う。「冬の観光閑散期対策」として有力な素材が目の前に転がって、いや、飛び回っているのである。しかし、地元の受け入れ態勢はまだまだ不十分。特に文化や習慣が大きく異なる欧米からのバードウォッチャーに対する配慮はほとんど手付かずの状態である。

 以前、駐在員として4年間勤務していた英国に於いては、野鳥観察は趣味の領域を超え、一大産業の様相を呈していた。光学機器・写真・絵画・出版・衣服などの分野での需要も大きいが、何と言っても、世界中の野鳥を観察に行く旅行マーケットの巨大さに驚かされた。英国には野鳥観察を目的とした旅行のみを扱う旅行代理店が20社以上もある。そして、それらの会社が経営を維持できるだけの巨大な需要が存在する。  

 世界中の野鳥を求めて旅する人々の大半はインテリ富裕層。客質としては「上の上」であり、性格も穏やかな紳士淑女が多い。趣味としての野鳥観察は、英国に始まり、その旧植民地や米国に普及して行った。英国だけでも300万人のバードウォッチャーが居るという。英国の野鳥の会(RSPB)は100万人の会員を有し、その年間活動予算は180億円に上る。アジアでは、日本に次ぎ台湾・韓国・シンガポールの富裕層がバードウォッチングに目覚めつつある。長期休暇が取れ、経済的にも恵まれた人々が道東の「ビッグ3」とりわけオオワシに強いあこがれを抱いている。死ぬまでに必ず見なければならない野鳥であると口を揃そろえて熱心に語る。

 私は野鳥観光を推進するに当たり「需要」の心配は全くしていない。問題は「供給=受け入れ態勢」の方である。外国人にとって日本の道東はまだまだ未知の世界。英語が通じる野鳥ガイドは居るのか? 雪道の運転は大丈夫か? 西洋式の宿はあるのか? トイレは? お風呂は? そもそも、お目当ての鳥を観察できる場所へどうやって行けばよいのか? などなど、野鳥観光情報の世界への発信は決して十分とは言えない。

 ただ、どう考えても、道東の野鳥観光の未来は非常に明るい。大自然に恵まれた道東である。地域経済の活性化のために、野鳥愛好家を誘致するという考えは悪くないと思っている。ただ、落とし穴もある。過度な観光開発は野鳥を追い詰める事になることは明白である。しかし、「見せない」「立ち入らせない」という従来からの「自然保護」が行き詰まりを見せている事も明白な事実である。人間の「見たい」「知りたい」という欲望を封じ込めるには莫大なコストがかかる。コストが思想に着いて行っていない。やはり、「見せながら守る」という世界の自然保護の考え方にもっと精通するべきだと思う。見せなければ観光振興は進まない。でも野鳥が居なくなれば、それこそ野鳥観光は成り立たない。この矛盾との戦い、それが自分の「天職」だと考えている。   

 道東の野鳥観光振興は始まったばかり。あせらずじっくりと、「観光振興」と「自然保護」の良きバランスを常に意識しながら、節度ある野鳥観光の発展に尽くしてゆきたい。(了)
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