【2019年夏時点での自己紹介】 2010年に31年勤務しましたANAを早期退職。25年間野鳥観察に通い詰めた根室市に移住しました。2010年7月には「根室市観光協会のバードウォッチング観光自己紹介

2009年7月13日月曜日

2009年6月25日(木)
「風蓮湖便り」 
風蓮湖の東の端、東梅岬で、持田野鳥保護区のタンチョウの番いの 雄がキツネに襲われて死にました。この番いは当初から続けて観察して きたので寂しいものがあります。1983年と84年にはこの繁殖地にはまだ定着した番いのツルはいなくて、84年の秋遅くに 2週間ほど2羽のツルが滞在しました。翌85年から繁殖を始め、 今年まで25年連続で繁殖しました。この番いの雄は、左脚の3本 の指の付け根が膨らんで、脚を運ぶときに指をすぼめることができませ んでした。この身体的特徴から89年以降の21年間は同じ雄 が繁殖したことが分かっています。このことから多分同じ番いのツルが 連続して繁殖したものと思われます。 ここはキツネの被害の激しい繁殖地でした。ヒナの姿が消えた次の日 に雄が左脚に傷を負い、歩くたびに翼を開き大きくビッコを引くことが 度々ありました。白い羽根が数日で灰黒色にくすんで、草の上に力なく 座り込んでいる2羽を見たことも度々でした。2004年には2羽目のヒナが孵った次の日に、両親鳥が浜辺を猛烈な勢いでキツネを追いかけて走るのが見られました。その晩、タンチョウの騒ぐ大きな声が巣の あたりでしたそうです。車で寝泊まりしていたカメラマンの人が教えて くれました。次の日、巣の上で足もとを呆然と見つめる雌、首を前に垂 れて翼を半開きでヨロヨロと大きくよろめきながら巣から出て行く雄を見ました。2羽のヒナが消えたのです。動物の悲しみが、こんなに直接的に感じられたことはありませんでした。ヒトである自分がツルの悲し みを、これほど大きく感じ取っていることに驚いたものです。 この25年間にこの番いは24回繁殖(抱卵)しました。ヒ ナが合計18羽誕生しました。そのうちの8羽が親とともに 越冬地へ向かいました。タンチョウは一回の産卵で平均1.8個の 卵を産み、卵の70~80%がヒナになり、卵の17~ 27%が10ヶ月まで育つそうです(「タンチョウ そのすべて」正 富宏之著 )。この率を当てはめると、ここの番いから生まれたヒナ 18羽は産んだ卵の約42%に当たり、平均値のほぼ半分、巣立った 幼鳥8羽は卵の18%に当たり、平均値の範囲の最低にしか なりません。よほど悪い条件の繁殖地ということが分かります。
民宿 風蓮 
松尾武芳
〒086-0074 
北海道根室市東梅213-7
Tel & Fax: 0153-25-3919
E-mail:
matsuo-t@plum.plala.or.jp

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