【2019年夏時点での自己紹介】 2010年に31年勤務しましたANAを早期退職。25年間野鳥観察に通い詰めた根室市に移住しました。2010年7月には「根室市観光協会のバードウォッチング観光自己紹介

2014年2月14日金曜日

観察ルールの提案297,183

2014年2月14日(金)
<エゾフクロウの観察ルールの提案> By イーグル
 エゾフクロウは北海道に生息するフクロウの亜種です。その可愛いしぐさや生息環境を含めた希少性・神秘的な雰囲気などが人気で、近年北海道を訪れるバードウォッチャーや撮影者の間での人気はうなぎのぼりです。特に欧米人バーダーをご案内していると、シマフクロウよりエゾフクロウの方が人気があるなと思う瞬間すらあります。
 ただ、人気が上がると、どうしてもマナーの悪い方が増え、近づきすぎや長時間滞在などによる「観察圧力」の問題が大きくなってきています。冬季昼間に夜間の活動に備え、大木の洞などでゆっくり休養を取っている姿を観察・撮影されるわけですから、彼らにとって迷惑な話であることは明らかです。それでも、一目見たい、可愛い姿を写真におさめたいという気持ちも理解できます。しかし、過度の圧力により、肝心のフクロウが洞でゆっくり休めなくなってしまったら見る事そのものが不可能になってしまいます。やはり、そっとしておいてほしいというフクロウの立場と「一目見てみたい」という我々人間の本音(保護関係者を含めて)のバランス・折り合いをどうつけるのか? この問題に真剣に取り組む時期が来ていると思います。
 「だったら、見せなきゃいいんだ」という声も聞こえてきそうですが、そのような意見の方々は、好奇心旺盛な人間という動物の研究が不足しており、また、昨今の情報化社会の実態に目をそむけています。スマホ・GPSをはじめとする近年の情報機器の普及は、一瞬にして興味深い情報が千里を走るという社会を作り出してしまいました。その流れを止めることはもはや不可能です。なのに「隠せばいい」という立場をとっても、「隠しきれていない」と言うのが実態です。そして、「隠した」という安心感・免責感覚から「結果に対して無責任になっている」事が多いように感じます。結局一部の不届き者の行動に対し、なんら有効な対策がとれず、陰で悪態をつくのが関の山。どんなに哲学が立派でも、フクロウの迷惑を低減できなければ、何もしていないのと同じです。
 私はそもそも何でも「隠せばいい」という考え方には反対の立場です。やはり、自然観察「後進国」の日本においては、「条件付きで見せる」ことにより、より多くの国民に日本の自然の素晴らしさを認知してもらい、広い視野に立ったより大きな自然保護のうねりを「自然観光」「野鳥観光」という手段を通して実現してゆくべきだと考えています。
 そのためには、観察の「具体的なルール」とそのルールを守らせる「強い監視体制」と「法律的な裏付け」が必要です。この点、一朝一夕には進みませんが、早く方向性を行政レベルでも確認し、具体的な取り組みを開始すべきだと思います。
今般、微力ながら、イーグルは春国岱原生野鳥公園を管理運営されている日本野鳥の会レンジャーの方々と相談協議し、ネイチャーセンター周辺に生息するエゾフクロウをいかに守るかについて、試験的な取り組みを実施してみました。非公式なご協力と理解しておりますが、ネイチャーセンターのレンジャーの方々のご協力とご助言に、心から感謝いたします。
 
 誠に不十分ながら、応急措置として以下の取り組みを実施しました。
1.隠すのではなく、センターを訪れる方のご質問にはお答えし、正確な場所と守るべき注意事項を説明する。同時なルールの順守をお願いする。
2.ロープにより「立ち入り禁止区域」を明確化する。
3.ロープに新たに設定した迂回路を明示するサインを付ける。
4.枯れ枝等で簡易「ハイド=ブラインド」を制作し、ロープの張り方の工夫により、観察者をそちらに誘導する。
5.簡易ハイドには、「ここから隠れて観察・撮影してほしい」旨明示したサイン(日英)を付ける。
6.連続して観察・撮影してよい時間は「5分」とし、それ以上の現場での滞在は禁止する。
7.出来るだけ頻繁にパトロールを行い、挙動不審者を発見した場合は、挨拶・質問を内容とする「声掛け」を行い、相手の様子をよく観察するとともに、ルールの説明を行う。決して、頭ごなしに注意したり、いきなり犯人扱いをしてはならない。
8.ルールを破る方の99%は「出来心」である。次回から「ちゃんとしてもらう」事に重点を置く。
9.いつも誰かに見られているという緊張感を観察者に持っていただく為に有効と思われる「具体策」があれば、今後も積極的に採用してゆく。
10.管理者が一番注意して行動する。決して「特別職意識」や「特権意識」を持ってはならない。身をきれいに保ってこそ、相手に真意を伝えることが出来る。
 などなど、まだまだ具体的な「対策」「方策」とは言えませんが、兎に角、第一歩を踏み出しました。

 以下の写真は、私が今週ご案内しているスコットランドからのお客様を現場にお連れした時の様子です。彼らに対しては、事前にリーダー役にルールの概要を説明し、特に「5分ルール」に対する理解を促しました。ルールに同意できない場合は「見せることは出来ない」と英語で説明。彼らは心よくルールを守る旨約束してくれました。面白いことに、5分という制約を付けたことにより、彼らの行動に変化が生まれました。他の場所では、時折現場に着いてから、だらだらと観察・撮影の準備を始める方もおられたのですが、今回は「5分しかない!」という緊張感からか、現場に着く前に、撮影器具のセット・アップはもちろん、フォーカスやアングル・構図のテストを始めたのでした。結果、現場に着くとすぐに観察・撮影が始まり、5分という短い(?)時間内に、一応、満足のゆくエゾフクロウ体験を終えられたようでした。そして、何よりもうれしかったのは、私が5分経過を知らせる前に、リーダー役の方が、「もう5分経過しました。みなさん撤収してください!」とリーダー・シップを発揮してくれたことでした。タダの一人も、文句を言うことなく速やかに撤収出来ました。
 もちろん、心の中では「名残惜しい」という方もいらっしゃったと思います。私は、その「名残惜しい」「もっと見ていたい」という気持ちを持ちながら現場を立ち去るのがCOOLなのではないかと思います。
 私は、自然・野鳥観光の要諦は、お客様に「我慢する大切さ」を体験・習得していただく事に尽きると思います。その「大自然に対する謙虚さの習得」こそが、高いお金を払って旅行することから得られる本当に貴重な「成果」であり、これからの日本人が最も大切にしてゆかなければならない「生きる姿勢」なのではないでしょうか。


5分しかない! 入念なチェックとテストに余念がない。

順路を臨時で変更。「立ち入り禁止区域」と「指定観察場所」を同時に明確化。

観察指定場所はロープより更に後ろに設定。

簡易ハイドに隠れ、特に下半身の露出を抑える。スコットランドからの一行。

スペルの間違いはご愛嬌という事にしてください。外国人はとてもいい、と言ってくれました。

カメラの腕はプロ級の方ばかり。

意地ぎたなくロープぎりぎりに陣取るのはCOOLじゃない!


大きな体で押しくらんじゅう。簡易ハイドを広げると人が増えるので、我慢してください。


5分ちょうどで、潔く撤収! 本音は撮り足らない人もいたので、翌日もまた連れて行って上げました。


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